2011年4月入学式スピーチ

求める人 与える人

ご入学おめでとうございます! 志の高い大勢の皆様に入学していただき東京保育専門学校職員一同大変嬉しく思っております。例年高校を卒業後直ちに進学される方が多数を占められていますが、本年度は大学や短期大学を卒業された方と社会人を経験された方の増加が顕著であります。就職の氷河期と言われる経済社会状況に起因する現象かとも考えられます。しかしながら皆様が保育と幼児教育に興味と関心を持たれ、さらには生き甲斐を感じられた故に本校への入学を決断されたことと拝察いたします。保育と幼児教育を重視する同志として、皆様を敬意と感謝の念をもってお迎えいたします。あらためて<ようこそ!>そして<ありがとうございます!>と申し上げます。

聖書には『求める』という言葉が数多く書かれています。『求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい、そうすれば見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、ひらかれる。』(ルカ11・9)(マタイ7・7)という一節は一般社会でもよく知られていますね。皆様は東京保育専門学校の門をたたかれ、その結果、門がひらかれ、めでたく入学されました。皆様は入学されて何を探されるのでしょうか? そして何を求められるのでしょうか?

一般的なお話として極端な例をあげますと、積極的に望みや考えを強く主張し、要求ばかりしていて、満たされない人もいますし、反対に極めて消極的で、これらすべてを封じ込めて鬱々としている人もいるでしょう。穏やかで幸福な気持ちを保てるのは、一に求め方にかかっています。自分の足りなさを認め、助けて頂きたいという『謙虚な求め方』が最善であるとおっしゃる方もいます。さらには、発想を転換して与える側に立ってみたらどうだろうと考えてみるのもよいでしょう。与えることのできる人、貢献することのできる人になるのは難しいことですけれども、幸せなことだと言えます。特に大震災の後は、このことを思わずにはおられません。そして、良く考えてみますと、保育者は文化の伝道者、与える側の人ですよね。

本校はカトリックの精神を根本として有為な保育者を養成することを目的としております。皆様が卒業されるまでに、保育と幼児教育の専門知識や技能を習得されることはもとより、是非この精神を学習していただきたいと願っております。そして学監の晴佐久昌英神父様が何時も励ましてくださるように、何よりもまず自分自身を大事にし、大切にすることこそが最も重要です。自分に自

信を持つことによりはじめて周りの人々を『思いやる』余裕ができると思います。上智大学名誉教授で本学園理事の磯見辰典先生が、本校の機関誌である児童研究に『愛の心』という題のエッセイを投稿されました。その結語には『愛する心を根底にせずに、どうして教育の技術が生かされようか』と書かれています。その通りであると思います。皆様も是非このエッセイをお読みください。

本校の指導校であるお茶の水女子大学の前身、東京女子高等師範学校の時代に、倉橋惣三という先生が幼児教育の先駆的指導者として活躍されました。倉橋先生の保育道の考え方は未だに新鮮で、本校における『愛と思いやりの心』を大切にする教育方針と一致します。倉橋先生は、教育において重視しなければならないのは、『対象』と『目的』であると述べられています。『対象』は教育を受ける側の者であり、『目的』には教育方法や達成水準なども含まれます。世の中の教育熱心な教員の多くは『目的』をことさらに重視し、『目的』にとらわれて『対象』を忘れがちであるが、どちらかと言えば『対象』の方を大切にすべきであると、倉橋先生は総括されました。

集団教育において『対象』を大切にするのは困難を伴うことですが、希求したい方針の第一です。第二は『対象』自身に、自ら学ぼうという主体性を持ってもらうように誘導することです。教育される、あるいは啓蒙されるという意識を持っていない乳幼児ばかりでなく、すでに意識している学生の皆様も、絶えず学び続けるという主体性をさらに強固にして頂きたいと願っています。これは私ども教職員に課せられた課題でもあります。

最後になりましたが、新年度にあたり1部を担当する専任教員として、3名の先生方を新たにお迎えしたことをお知らせいたします。学生の皆様と教職員が一丸となって理想の教育環境を作り上げるよう努力いたしましょう。どうかよろしくお願いいたします。

(東京保育専門学校2011年4月入学式スピーチ 松本勲武)

(2013年06月11日更新)

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