2013年3月卒業式スピーチ

三つの幸せ

なによりもまず「御卒業大変おめでとうございます」と申し上げましょう。二年、あるいは三年の期間しっかりと勉強し、保育の心を学び、保育の技能を磨いてこられた結果として幼稚園教諭の免許と保育士の資格を取得されることとなりました。皆様のご努力と困難を乗り越えた意志の強さを称賛し、ご家族やご関係の方々と共に心からお祝い申し上げます。

東京保育専門学校は、「カトリックの愛の心を持つ真の保育者を育てる」という高邁な理想を掲げています。大部分の皆様は、「私はまだ真の保育者にはなれていないなあ」とお思いでしょう。そう思われることこそ大切です。皆様は真の保育者のパスポートを取得したとお考えください。これからこのパスポートを活用して経験を積みさらにレベルアップしていかれることでしょう! The best is yet to come! です。 米国のオバマ大統領が再選を確実にした時に発したフレーズですが、一般に「最高のことはこれからやってくる」、「絶頂はまだこれからだ」などと和訳されています。私は、シスターの渡辺和子先生が保育者論の授業で皆様に語りかけられた「置かれた場所で花を咲かせましょう」がぴったりだと感じます。

本日あらためて、皆様が三つの幸せをつかむことができるよう祈念いたします。健康という幸せ、子供たちを育てる幸せ、子供たちに教えることのできる幸せの三つです。健康には身体的健康や精神的健康の他に、円滑な人間関係を意味する社会的健康があることは保育者論の最初の授業でお話ししましたね。社会的健康では言語コミュニケーションのほかに適切な生活習慣等も含まれる非言語コミュニケーションが大切であり、先生方から日々ご指導いただいたことですね。

あらゆるコミュニケーション能力を駆使して保育することに喜びを感じられることこそ真の保育者にとって最高の冥利です。これらの幸せをつかむ原動力は何でしょうか? それは、分かり易く「理性」と「思いやりの心」と言い換えることのできる「カトリックの愛の心」であり、晴佐久昌英神父様が機会あるたびに強化して下さっている皆様の「自信」です。理性とは、単なる知識ではなく、知識を総動員していろいろな観点から客観的に考えることのできる能力です。「自信」は「根性」と言い換えることができるかもしれません。

さて、アメリカではナルシズム(自己愛病)、日本では自己中(自己中心主義)病と呼ばれる古くて新しい病気が、最近小さな社会から国際社会まで世界中に蔓延して害毒をまき散らしています。皆様は社会のそこかしこでこの流行病に罹った人達に出会い対応せざるを得ない立場になるかもしれません。世の中で成功し地位のある人の中にもこの病気に罹っている人が少なくなく、殊のほか自信に溢れていて傲慢なので、大変なストレスを受けるかもしれません。この病気の治療と予防には、「理性」と「思いやりの心」や「人知を超えた存在への畏敬の念」を理解してもらうほかありません。受けたストレスを癒す特効薬としてもカトリックの愛の心がお奨めです。

保育者論の授業でご紹介したウィリアム・ジェイ・ベネットの『魔法の糸』はこのような目的で一昔前に書かれた本です。米国で再度ベストセラーになってほしいと考えているのは私だけではないでしょう。皆様が「真の保育者」をめざしてレベルアップしていく上で『魔法の糸』がロードマップよなり、晴佐久神父様のお言葉がコンパスとなると確信しております。

最後になりましたが、2011年聖心祭閉会式でホールに鳴り響いた皆様の雄叫び

"We are gifted! "

が忘れられません。

結びの言葉としてもう一度ご一緒に唱和いたしましょう。

"We are gifted! "

それでは皆様、元気で行ってらっしゃい!

(東京保育専門学校2013年3月卒業式スピーチ 松本勲武)

(2013年06月11日更新)

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