◇2013年4月入学式スピーチ
学びは遊びから
保育と幼児教育のプロを養成する東京保育専門学校にようこそ入学されました。保育と幼児教育は子どもたちの未来のもとをつくる仕事をするので、これほど楽しく、大切で、やりがいのある職業はありません。このような専門職を目指す皆様を、私は大変たのもしく誇りに思います。希望に燃えて入学された皆様が万が一にも挫けるようなことなく、全員が卒業できますようにと心からお祈りいたします。
『五体不満足』という本や『だいじょうぶ3組』という映画で有名な乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)さんの言葉をお借りしますと、子どもが幸福の道を歩むことができるか否かは子どもが自己肯定感を持つことができるかどうかにかかっています。自己肯定感は適切な自己愛あるいは自信と言い換えられます。乙武さんの新著『自分を愛する力』から読み取れるのは、この自己肯定感の形成には母親をはじめとする保育者の"質の高い愛"、"理性をともなう愛"が必須であり、この愛に見守られて子どもが超楽しい経験をすることが必要十分条件であるということです。子どもたちばかりではありません。私たち大人が幸福の道を進むためにも、理性をともなう愛を学び自己肯定感を身につけて、大いに楽しみたいものです。楽しく笑っていると健康になり、いやなことでも、楽しみながらやると脳が活性化するとの研究結果もあります。
さて、高校の授業は記憶することを強制されるので嫌いだったという方が多いかもしれません。本校の授業時間は大学と同じように一コマ90分とさらに長くなります。これは悪夢だとマイナスにとらえると不幸の道を歩むことになります。誰しも周りから強要されて勉強をしていると思えば苦痛になります。しかしながら、遊びのなかで習得していくことは楽しいですね。子どもは遊びながら五感と第六感を働かせて、ことばや読み書き算数運動音楽芸術等あらゆる能力の基となる力を育んで行きます。大人も学びを遊びと思うことができればよいのです。あなたの遊びの概念を進化させることを考えてみましょう。コミュニケーション上手・話上手になりたいと思わない人はいないでしょう。実は話し上手は聞き上手なのです。子どもたち相手でも大人相手でも同じです。講義をする先生の話をよく聞いてあげるという遊びを始められたらいかがでしょうか?きっと面白いことが見つかります。
これまで、親御さんや先生から「遊んでばかりいないで少しは勉強しなさい」と言われ続け、勉強は楽しい遊びの対極にあるもの、勉強は楽しくないという無意識の固定観念がインプットされてしまっているかもしれません。これからは、周りに迷惑を掛けずに遊びながら学習するあなただけの方法、あなただけの世界をぜひ創り出してください! キーワードは"内なる遊び心"、周りに迷惑をかけない、あからさまでない遊び心です。
最後に12世紀初め平安時代末期に今様と呼ばれて流行した歌謡曲の一つをご紹介しましょう。なんとなく元気がでるおまじないのような歌です。
遊びをせんとや生まれけむ
戯(たわぶ)れせんとや生まれけむ
遊ぶ子供の声聞けば
わが身さへこそ揺るがるれ
『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』
「遊びで楽しんでいる子どもの声を聞くと、生まれた時には持っていたけれども大きくなるにつれて失ってしまった活力や好奇心、そして忘れてしまった遊びの楽しさや大切さを心の底から思い出す」という意味だと私は解釈しています。
以上、"学びは遊びから、大いに楽しみましょう!"という趣旨で述べさせていただきました。
ご入学まことにおめでとうございます。
(東京保育専門学校2013年4月入学式スピーチ 松本勲武)

このウェブサイトは携帯電話でも同じアドレスでご覧いただけます。