◇2014年3月卒業式スピーチ
セルフマインドコントロール
ご卒業大変おめでとうございます。卒業される皆様、皆様のご家族、関係各位、そして皆様をご指導くださった教職員の方々とともに喜びを分かちあえることを大変うれしく思います。皆様それぞれが大変なご努力をされた結果が今ここにあることを思い起こし、皆様に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
今年度は、昨年度該当者がなかった特別賞をはじめとして、皆勤賞、精勤賞ほか多くの賞の多くの受賞者を顕彰することができました。"わが学園はカトリックの精神を根本として有為な保育者を養成することを目的とするものであって、我が国における幼児教育並びに保育事業の向上発展に寄与することを使命とする。本学園に学ぶものは、この建学の精神に基づき、学園の定める規則、指示に従うことはもとより、常に謙虚、寛容、忍耐を忘れずに、師を敬い隣人を愛する心がけをもって勉学し、行動しなければならない。"と学生必携に謳われています。まさにこの精神を体して誠心誠意努力されたことがご卒業と受賞につながったわけであります。本当におめでとうございます。
世の中では、本校卒業の先生達は大変思いやりがあり、よく気が付き、よく働くという好評価を受けています。本校は昨年6月に文部科学省の視察を受けました。視察委員の先生方から、“本校は幼稚園教諭免許状授与の実績が日本で一番である。また教育実習が誠実に行われ、ハウツウの教育が充実している。しかし課題として、教養教育をもう少し充実させて他の学校のお手本となって下さい。”という評価とご指導をいただきました。ですから卒業される皆様も、保育の専門職としての自信をもって活動し、学び続けていただければ幸いです。
話は変わりますが、昔アメリカの子ども達はマシュマロが大好きでした。1972年にスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルがこのマシュマロを使って行った研究が今注目を浴びています。通称マシュマロ実験、あるいはマシュマロテストなどと呼ばれている研究です。付属幼稚園の4歳の子ども一人一人を対象にして実験が行われました。マシュマロを一つあげて、"先生はこれからいなくなるけれど15分間食べるのを我慢できたらもう一つあげるよ"といって部屋に一人だけ残して様子を観察したところ、三分の一の子ども達が我慢できたそうです。そして子ども達のその後の成長を長年かけて追跡調査したところ、我慢できた子ども達のほうが社会的に成功していることがわかりました。知能指数(IQ)の高さよりも自制心の強さが人の社会的成功に役立つという統計的な結論でした。
同じようなテストをすると年中さんの何割ぐらいが我慢できると思いますかと、お隣の聖心学園幼稚園の先生にお尋ねしたところ、8割以上だと思いますとのお答えでした。 私達日本人は、経済を発展させて先進国の仲間入りをし、大変高いレベルの教養と文化を保ち、健康長寿で安心安全な社会を享受していることをあまり意識していません。しかし外国では評価され注目されています。例えばハーバード大学の公衆衛生学者イチロー・カワチは日本の成功は、しっかりした幼児教育・初等教育の賜物であると述べられています。昨年9月にはイスラエル教育大学のルス・バールシナイ先生が本校を訪れて、1部1年生に講義と演習を行って下さいました。バールシナイ先生は自制心を植え付ける日本の教育法を大変高く評価しながらも、創造力を育て自己肯定感を強化するために子ども達に伸び伸びと自由に学ばせるイスラエルのやり方を紹介して下さいました。
自制心と想像力と自己肯定感はあながち無関係ではありません。むしろ密接に関連しているかもしれません。ここで改めて自制心に着目し、オノマトペを用いて考察してみましょう。当座の欲求にとらわれてピリピリ・カリカリ・キリキリした気持ちで我慢する、あるいはビクビクして恐れる気持ちで我慢するのは、いずれも苦しみを伴う自制です。またフワフワ・ウトウト・キョロキョロといった感じで我慢の対象から意識を逸らして、苦しみを回避する自制もあります。さらにアーアー・ヤレヤレどうしようもないなといった感じで諦めてしまう受け身の自制もあります。そうではなくて、より良い未来を見据えてワクワク・ウキウキした気持ちで我慢を励みに変え、苦しみを楽しみに変える能動的な自制もあります。このように自分の気持ちを前向きにうまく制御できる自制心をセルフマインドコントロールと言います。これを会得すること、マスターすることができれば一番良いですね!
最後になりましたが、皆様が晴佐久昌英神父様お墨付きの自己肯定感をしっかり持ち続け、セルフマインドコントロールの達人目指してマシュマロのように柔軟な思考を心がけ、マシュマロのように子ども達から愛される先生になってくださるようエールを送ります。
それでは行ってらっしゃい!
(東京保育専門学校2014年3月卒業式スピーチ 松本勲武)

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