2018年3月卒業式スピーチ|保育士資格・幼稚園教諭免許の取得なら東京保育専門学校

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2018年3月卒業式スピーチ

お世話する人

ご卒業、誠におめでとうございます。日々努力を重ねて今日の良き日を迎えられた皆様に心からのお祝いを申し上げます。また、皆様をサポートして来られたご家族や、懇切丁寧に粘り強くご指導くださった本校教職員の先生方に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

卒業される皆様は、いよいよ4月から小さな子ども達をお世話する保育専門職のお仕事を始められます。可愛い、可愛い子どもたちが待っています。実は、私は年寄なのに“校長先生かわいい!”と言われて戸惑ったことがありました。改めて調べてみると、「かわいい」という言葉の定義には長い歴史があることが分かりました。平安時代のころまでは、「かわいい」は「かわいそう」という意味であったのが、その後「あいらしい」という意味が主流になり、明治時代以降に「小さくて美しい」「あどけない」という意味が加わり、最近では皆様が良くご存知のように「かっこいい」という意味も加わって、「誰も傷つけず相手を幸せにする魔法の言葉」として受け入れられています。子どもたちをお世話するのは大変なことですが、皆様には、可愛い子どもたちから「先生かわいい」と言われて慕われるご褒美がきっと待っています。私へのご褒美もありがとうございました。

 

さて話は変わりますが、本年度の教養特別講座ではシスターの景山あき子先生が1コマ担当してくださいました。そのお話の中で、日本の保育現場では先生たちの待遇が悪いことと先生に掃除をさせているの事を問題視する外国の人の意見を紹介されていました。先生たちの待遇改善については、NHKをはじめとするマスメディアで大きく取り上げられ、行政も動き出しました。しかし、掃除については、日本では外国とは違った考え方・文化があります。

 

皆様は、フランシスコ教皇様が男性のカトリック信者だけではない移民の人たちの足を洗いキスをして祝福され、「みな平和の中で共に生活することを望んでいます」とおっしゃった聖木曜日の儀式1)を覚えていらっしゃることでしょう。しかし外国の社会一般では掃除は一番下層の人がする仕事であるとして蔑まれているようです。一方日本では社会的地位には関係なく掃除するのではないでしょうか。帝京大学ラグビー部が大学ラグビー選手権で9連覇した秘訣は、最上級生がトイレ掃除や配膳などの雑務をすることであるという話がマスコミで持て囃されるほど、掃除はある種崇高な行為とみなされているようです。

 

いくつもの大学で“異文化理解”や“聖書”のお話をされているエッセイストの石黒マリ―ローズさんが、昨年『日本だから感じる88の幸せ』(宝島社刊)という題の本を出されました。その中で、列車で一緒に旅行したアメリカの大学教授夫妻が、「どこも綺麗なので床に落とした食べ物を食べても大丈夫」といって感心していた事を引き合いに出して、ちょっとオーバーですが、「外国人にとって日本のあらゆる場所が信じられないほど清潔である」と書いています。また、日本の小学校では給食を自分たちで配膳し、“いただきます”で始まり、食べ終えて “ごちそうさま”をした後、各自食器を片付け、お掃除をすることに驚いて、「日本の小学生は教室を掃除しながらマナーを学ぶ」とまとめています。

 

幼稚園や保育園ではどうでしょうか? 本校のお隣の聖心学園幼稚園では、毎朝、フリーの先生ばかりでなく主任の先生や時には園長先生までもが加わって園の周りの道路を清掃されています。ある時、園庭を箒で掃除している先生に向かって園児が「僕にもやらせて!」とお願いしている場面に出くわして、大変微笑ましく感じました。先生が子ども達のお手本になっているのですね! 幼稚園や保育園では、子ども達が遊んだ後は、皆でお片付けをし、食事の前には手を洗い、お祈りをして“いただきます”をするのはごく普通のことです。

 

ドイツの哲学者ニーチェ2)が、掃除をすることは、整理・整頓・清潔・誠実・正義・躾を包含する清潔観念の形成のための第一歩であり、この観念を身につけさせるためには、子どもの時を逃してはいけないと書き残しています。

 

ここまでお話しすると、もうお判りでしょう。保育園や幼稚園の先生が、子どもたちに清潔観念を身につける手ほどきをされているのです。日本において、曲りなりにも健康・長寿で安心・安全・清潔な社会が形成され、5S運動に象徴されるような活力ある産業が発展している大もとの要は、小学校就学前の子ども達への清潔観念の刷り込みであり、保育園の先生や幼稚園の先生のおかげなのです。そして、この清潔観念を超訳すると、要するに、“周りの環境ばかりでなく、自分自身を含む人を大切にお世話する精神”であり、これは“清く、優しく、美しく”のカトリックの愛の精神と同じであると私は考えます。

 

最後になりましたが、掛け替えのない使命と役割を担う保育の世界で、皆様が本校で学ばれたお世話する精神・カトリックの愛の精神を大切にして、末永く活躍されますことを心からお祈りいたします。

 

みんな違って、みんなかわいい! そだねー! 

 

それでは、行ってらっしゃい!

 

(2018年3月卒業式スピーチ 松本勲武)

 

 

1) ヨハネによる福音書 弟子の足を洗う13章1節~17節 に基づき足を洗う儀式で、 洗足式とも言われる。

2) 超訳ニーチェの言葉エッセンシャル版 フリードリヒ・ニーチェ著 白取春彦訳(ディスカバー・トゥエンティワン)2015年発行  041子供に清潔観念を与える。

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