学びの5K
ご入学おめでとうございます。今年の9月には創立90周年を迎え、これまでの卒業生が15,000人を超える伝統ある東京保育専門学校にようこそ入学されました。熱意溢れる大勢の皆様をお迎えしてこれほど嬉しいことはありません。教会の2本の桜まで満開となってお祝いしてくれています。本校はカトリックの愛の教えを大切にして、マリア様を理想とする保育幼児教育のプロを養成する専門学校です。元々は東京保姆専修学校という名称でしたが、1971年に東京保育専修学校、1977年には東京保育専門学校に改称され現在に至っています。この創立90周年という節目の年に、初めて男子学生を受け入れることになりました。ジェンダーフリーの考え方、男女雇用機会均等法、男女共同参画などの改革の流れのなかで、徐々に増えてきた保育士を目指す男性に対しても、マリア様を理想とする保育幼児教育のプロとなる学びの場を提供するためです。
皆様はジェンダーの差だけではなく、個性や年齢、学歴、社会経験など、様々な面でお一人お一人違っています。お互いに大切にし合い、認め合い、助け合いながら学びの良い環境を作っていきましょう。教職員も一生懸命頑張ります。
校長が皆様に是非取り組んでいただきたいと考える学びの課題を、ローマ字表記にすると頭にKがつく言葉を使って五つあげてみたいと思います。皆様よくご存知の「きつい」「汚い」「危険」を表すブラックな3Kとは大違いのホワイトな5Kです。
一番目のKは、「カトリックの愛の教え」を学ぶことです。 本日早速、理事学監の晴佐久昌英神父様からお話がありました。神父様は常々「神あるいは仏と言っても良い何か絶対的な存在が、天から私たち一人一人を見守っていてくださるので、みんな大丈夫です、自信を持ちましょう」とおっしゃって私たちを励ましてくださいます。自信を持って、清く、優しく、美しい心を持つマリア様を目指しましょう。他者を思いやり、親切にすることが、自分自身の幸せにもつながることが、最近の自然科学的研究からも明らかになってきました。
二番目のKは「コミュニケーション能力」です。 まずは言語コミュニケーション: 聞くこと・話すこと・読むこと・書くことは、授業ばかりでなく、保育現場でも、社会でも殊のほか重要な事です。子どもたちのお手本になるような良い言葉、丁寧な話し言葉を身につけましょう。そして保育の記録を取ったり保護者へのお便りを出したりする時には正確で丁寧な書き言葉が求められます。とにかく言葉遣い一つで人間関係が変わります。そして、非言語コミュニケーションで特に気をつけたいのは適切な服装や身だしなみです。今日の皆様は全員合格ですね。
三番目のKは「健康管理」です。 周りの人たちと円滑なコミュニケーションが取れていることを表すのが社会的健康です。この社会的健康がすぐれていると、精神的健康も良くなり身体的健康にもつながります。改まってスポーツをするのも良いのですが、睡眠や食事をしっかり取って規則正しい生活を心がけ、日常的に料理や洗濯、清掃、片付けなどの家事・雑用をして脳と筋肉を忙しくさせることが健康を保つ秘訣です。
四番目のKは「行動力」です。「百聞は一見に如かず」という諺がありますが、保育ではさらに「百見は一行に如かず」ということがとても大事です。見ているだけでは身につきません。行動することができて初めて学んだことになり、保育することができます。ピアノが良い例です。見聞きするだけでは上手くなりません。練習を繰り返して初めて上手になります。実習では、五感を働かせて、積極的に行動しましょう。
五番目のKは「継続力」です。「継続は力なり」というモットーがありますね。英語では ”Continuity is the father of success.”「継続は成功の父」という言い方をします。成し遂げるためには、こつこつとやり続ける事がとても大事です。バスケの神様とまで言われたマイケル・ジョーダンも同じことを言っています。”Step by step. I can’t see any other way of accomplishing anything.” 「どんなことでも何かを達成するには一歩ずつ着実に取り組むことだ。これ以外方法はない。」と言っています。
そうは言いましても、時には壁に突き当たったり、スランプになったり、人間関係に悩んだりして元気をなくし、落ち込み、心が折れそうになる事があるかもしれません。その様な時には、遠慮なく教員の先生、スクールカウンセラーの先生、キャリアカウンセラーの先生、主事の先生、副校長先生、校長、あるいは神父様など誰でも話しやすい人と相談してください。また、いろいろな経験を持つクラスメートや先輩、ご家族の方と悩みを分かち合い、励まし合うのも良い考えです。
先日催された本校の卒業式で晴佐久神父様が、世界のスーパーアスリートとなったフィギュアスケートの羽生結弦さんや水泳の池江璃花子さんの考え方の根本になっていると思われる、聖書の一節を教えて下さいました。「神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」「新約聖書コリントの信徒への手紙一10章13節です。これを改めて皆様にお伝えして、たとえ試練が待ち受けているとしても、互いに助け合い,神を信じてその試練を乗り越え、皆様全員が卒業されますことを心からお祈りいたします。
以上、本校での皆様の学びがはじまるこの良き日に、カトリックの愛の教え、コミュニケーション能力、健康管理、行動力、継続力の5Kと試練克服の檄を飛ばして、お祝いのスピーチとさせていただきます。
(2019年4月入学式スピーチ 松本勲武)